
深夜アニメと聞くと、まだまだ一般認知度は低くマニアックな文化のように感じてしまう人も少なくないかもしれません。
その一方、アニメ作品の中には日本を飛び出し海外でこそ高く評価されているものもあるのです。
2015年夏に放送開始となった作品、『がっこうぐらし!』の第一話は、明るく軽やかなオープニングテーマと「最近、学校が楽しい!」という主人公のモノローグから始まり、一見ふつうの女の子がどこにでもあるドタバタ学校生活を送る様子が描かれました。
しかし後半の5分間でほとんどすべてを覆してしまい、放送直後から波紋を呼んだのです!
さらにその波紋は、海外のアニメファンにも及び大きな話題となりました。
目次
がっこうぐらし!とは?
2015年7月より、TOKYOMXを中心に木曜深夜に放送されたテレビアニメ。
また、原作は海法紀光さん、作画は千葉サドルさんにて、芳文社『まんがタイムきららフォワード』で2012年から漫画作品が連載されています。
キャッチーなタイトルやいわゆる「萌え」系の可愛らしいキャラクターが特徴的で、だからこそ大きな「裏切り」を呼んだ話題作です。
ネタバレ有!『がっこうぐらし!』の第一話、衝撃のあらすじとは?

『がっこうぐらし!』第一話は、主人公である天真爛漫な女の子・ゆきの視点を中心とした日常ストーリーがメインとなります。
授業を受けたり、みんなでご飯を食べたり、友達とおしゃべりを楽しんだり…そこに描かれるのは、ごく平凡な高校生たちの日常であり、アニメ・漫画作品としても決して特殊ではない内容です。
しかしラストの5分、楽しそうに喋っているゆきの姿を俯瞰で捉えるカットがはじめて差し込まれることによって、荒れた校内、割れた窓ガラスが描き出されます。
さらに、ちらっと映るワンカットでは校庭をゾンビがうろついているという衝撃的な現実が明かされます。
主人公の視点を離れることによって視聴者も主人公の妄想から離れることができ、学校には主要キャラクター以外のクラスメイトは存在しておらず、楽しくわきあいあいとした学校生活は主人公の頭の中にしかないものだと知らされるのです。

つまり彼女たちは学校から出られないために、やむなく「学校暮らし」を強いられているのであり、前半部分で放送されていたストーリーは強いショックから幼児退行してしまった主人公の妄想と、それに暗黙のルールとして付き合ってくれる友人たちの姿であったことが判明します。
『がっこうぐらし!』に対する海外の反応とは?

大手動画サイトには、上記の衝撃的などんでん返しが待ち構える『がっこうぐらし!』第一話を視聴する外国人アニメファンたちの様子がアップされました。
彼らもやはり、よくある日常モノアニメを見ている気分でいたようで、途中ほのぼのとしたギャグに口もとをゆるませつつ前半は淡々と視聴しています。
しかし…「様子がおかしい!」と気づき始めると一変!彼らの目は爛々と輝き出し、エンディング曲がかかるころにはそれぞれの母国語でアツく作品考察をはじめます。
特に、ラストシーンにてゾンビがちらりと映りこんだときには「ゾンビ!?」と歓喜(?)の声をあげるなど新鮮な反応を見せ、日本人アニメファンも「海外の人って本当にゾンビが好きだな!」と思わずにやけてしまいます。
『がっこうぐらし!』が海外で人気になった理由とは?

では、なぜ深夜アニメである『がっこうぐらし!』は日本を飛び出し、海外でも話題となったのでしょうか。
『がっこうぐらし!』第一話の魅力はやはり「可愛らしい女子高生たちによる日常アニメかと思っていたら、実は殺伐としたホラー作品だった!」というラストのどんでん返しにあります。
日本では、乾くるみさんによる小説作品『イニシエーション・ラブ』が同時期に話題となり映画化もされましたが、こちらも原作小説ラスト2に行に詰め込まれたどんでん返しが大きな衝撃を呼びました。
海外の作品では、定番とも言えるアメリカ映画の名作『シックス・センス』『バタフライ・エフェクト』などの作品に視聴者を裏切る展開が用意され、それこそが視聴者を夢中にさせる要因に直結しています。
日本国内において「深夜アニメ」と言えば、ごく一部のコアなファンに愛されるカルチャーという認識が根強いですが、実は国内外のファンがフラットに楽しむための要素をそなえた作品も少なくありません。
どんでん返しをはじめとした手法を取り入れ、映画に並ぶ映像作品として満足感を覚えられる仕上がりになっているのです。
『がっこうぐらし!』は「萌え系アニメ」のステレオタイプなイメージを逆手にとったどんでん返しを成功させることで、多くのファンに愛されるべき作品となったのです。
『がっこうぐらし!』以外に広がる?今後のアニメ業界
今、日本のアニメ・漫画作品は「クール・ジャパン」として海外の方々からも高く評価されています。
そして消費者が増えファンの層が厚くなったことによって、リアルタイムで製作・放送されている作品も国内外のファンの審美眼に耐えうるよう着実にレベルが上がっているのです。
「たかがアニメ作品」と思っていても、映画的な映像テクニックを使用するなど様々なギミックを潜ませ、さらに幅広い層を楽しませるエンターテイメントとして大きくなっていきます。
今後も深夜アニメの枠から、さらなるムーブメントを巻き起こす作品が登場するかもしれません。